現在の指定された奈良公園内の鹿(種:「日本鹿」)は雄200・雌800・小鹿200の約1,200頭が生息している(年間140頭前後交通事故)。国指定の天然記念物(「奈良のシカ」生息地保存・1957/9/18)である。
「一般財団法人奈良の鹿愛護会」によって保護活動が実施され、世代を超えて数百年間の人間との関りで野生動物がこれ程飼いならされている例は世界中の他には無い。平城京鎮護の為鹿島神宮よりタケミカヅチノミコトを御祭神として勧請(かんじょう)した時、白鹿の背に乗り奉遷された故事により、神鹿として神聖視され保護されてきた事による訳だ。
野生では雄鹿の角は袋角なので冬から春場にかけて一年に一度抜け落ちるのだが、発情期をむかえた雄鹿の被害を防ぐ為に鹿の角切りが秋に一斉に行われる。観光行事は現在10月体育の日前後の土日を挟んで、春日参道の飛火野にある鹿苑角きり場で3日程行われる。角切は、寛文11(1671)年興福寺が奈良奉行溝口信勝の要請で町の所々で始まったとされる。
また鹿の年齢は外見上、角を見ればわかるのである。一歳の牛蒡角から二歳・三歳と枝分かれの数を増す。最近は、交通事故や心無い観光客の与える駄菓子類・ビニールなどの消化出来ないもので短命に死亡するものも多い。明治維新混乱期や戦時には密猟で79頭に激減した事があった。昭和4年より角きり場を設け、昭和28年復活し現在の姿となっている。
春・冬の日を限定しての早朝(於:飛火野10時頃15分間)には、金管楽器ナチュラルホルンによる「鹿寄せ団栗の餌まき」は風物詩。ちなみに最近の若草山での奈良若草山観光振興会イベント「鹿煎餅飛ばし大会」(春・秋一日限定・参加料¥300)も俄かな人気。
鹿煎餅は、唯一般若阪(はんにゃざか)の武田商店で米糠と小麦粉で一枚一枚手作りで焼き上げられる(一つ¥150)。奈良公園の芝生が綺麗なのは鹿のお陰だし、大量の鹿糞(餌の関係で奈良の鹿は丸い糞が特徴)は、日本最大多種の「糞虫(糞ころがし)」のお陰で環境が保たれているのである。
鹿愛護会の鹿苑では鹿について、学習の場パネル展示がある(無料・月曜休み・10時~16時)。6月には子鹿公開(奈良のシカ緊急ダイヤル0742-22-2388)。
【freelance鵤書林46 いっこう記】
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