―堅下一光園大井農場の例
甘藷(かんしょ)は、江戸時代に鹿児島薩摩地方から全国に伝わった為「さつまいも」と呼ばれている。関西の主流は四国吉野川河川砂帯原産の〝鳴門金時(なるときんとき・在来種)〟や東国の〝紅東(べにあずま)〟であり、ホクホクした食感の品種である。近年では、鹿児島原産〝安納芋(あんのういも)〟に代表されるネットリとした食感のサツマイモも話題になり、好みの食感で品種を選べ消費者のニイズも高い。
我が国では鹿児島・宮崎・茨城・千葉県の生産が8割を占め、その内の4割は鹿児島県シラスス台地で81万t弱の生産高である。植物学的にはヒルガオ科サツマイモ屬で、塊根が芋で本州では花は咲かない。原産地は南亜米利加ペルー熱帯地方と云う。大航海時代に東南亜細亜に導入され、17世紀初頭には琉球・九州薩摩地方へ伝わったとする。九州では、今も「唐芋」と呼ばれる。半島には朝鮮通信使が持ち帰ったのを起源とする様だ。
歴史的に8代将軍吉宗の頃、儒学者青木昆陽(あおきこんよう・文蔵1698-1769)が効用を説いた『蕃藷考』を献上『甘藷記』を著して全国に広く普及した。昆陽はこの功により、〝薩摩芋御用掛〟を拝命して幕臣(〝甘藷先生〟目黒不動堂に碑文あり)に採りたてられたのは有名な話である。また〝いもづる式・芋を引く・芋っぽい〟などの日本語も誕生している。
堅下一光園では、強い甘味がありながら後味がすっきりした上品な甘みで密の入る〝紅はるか〟や甘くしっとりの極甘スイーツ芋と評判の〝シルクスイート〟を鳴門金時・安納芋と共に苦労して苗を手に入れられて栽培されている。シルクスイートは、肉質はしっとりとした粘質で舌ざわりが良く、甘みが強い品種で皮色は鮮やかな濃赤紫で、他の芋の様に太らないが若者を中心に焼き芋に絶大な支持を得ている。
サツマイモと云う奴は、長期間保存がきくので昔は腹持ちのする非常食と云う色彩が強かったが、現在では食物繊維が豊富で、切り口から出るヤラピンが腸の働きを促し、食物繊維との相乗効果で便秘の改善に効果的やビタミンC・パントテン酸が多く含まれ健康食品として注目されている。皮部には内質部よりカルシウムが多く含まれ、紫色には抗酸化作用の高いアントシアニンも良いとされる。
軒下にどこの農家にも「芋穴」と呼ぶ貯蔵穴があったものだが、乾燥と低温に弱いので冷蔵庫には入れず、新聞に包んで風通しの良い場所で保管すると良いだろう。石焼き芋・蒸かし芋以外には、天婦羅や薩摩芋飯・栗きんとん・大學芋・チップスなど色々レシピを考えて頂きたいものだ。昔、鳴門金時の茎は佃煮に美味であった。
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