―堅下一光園大井農場の例
もう一般日本人には馬鈴薯の言葉は死語である様だ。一般的には〝じゃがいも〟である。関西では1・2月に作付けし、4月に紫の花が咲き田植え前の6月には収獲する。今や全国規模で栽培されているナス科多年草。多くは近代に改良されJAである農協を通じた〝メイクィーン種や男爵種〟で、全国のスーパー・八百屋で一年を通して販売される家庭の五大野菜の一つである。
ちなみに馬鈴薯は〝馬の首に付ける鈴に似ていた〟のでその名が生まれた中国名で、農学用語では生きている。中国では違う作物を指し、誤って名が伝来したのだと云う。江戸期の農学者小野山蘭山が馬鈴薯はジャガタラ芋と同じもだと解説以来、我が国では双方の呼び名が存在する。
その一大産地は何といっても8割(77%)を占める帯広を中心とした大規模農地北海道であるのは言うまでもないが、続いて多いのが意外や長崎県島原半島南西部(4%)で、南串山町段々畑の棚田である。殆んどがビニールを張ったマルチ作りで、二毛作が行われている。その他に鹿児島県産(3%)も関西に多く流通している。
長崎と云えば、16世紀末(慶長3年)最初の渡来の地である。オランダ(阿蘭陀)船により、南洋のジャワ島から来た芋であって「ジャガタラ芋」と称したのだった(ジャガタラはインドネシアジャカルタの古称)。いずれにしても15世紀半ば~17世紀半ばのポルトガル(葡萄牙)・スペイン(西班牙)大航海時代に南亜米利加大陸より全世界に広まった野菜なのだ。
近年は我が国でもItalian・French料理を中心に、ノーザンルビー(果肉赤色)・シャートクィーン(紫色)・アンデス〔宝石〕レッド(黄色)の芋が人気である。これらの収穫量は多くないが、関西の相場は100g70円強。伝統野菜果実を生産販売されている堅下の一光園大井農場では、〝キタアカリ・キタカムイ・アンデス宝石種〟を500g前後200円で販売されている。
キタアカリ種は男爵種とよく似るが、黄色ぽく粉質で熱するとホクホク食感ががあり甘味が強い。〝栗じゃが芋〟とも呼ばれ粉フキ芋やポテトサラダには最高の種である。
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