生駒聖天・寶山寺(いっこう寺社解説27)

―大和の現世利益のお寺5

   庶民信仰のメッカ〝生駒聖天さん〟こと〝寶山寺〟は、真言律宗大本山であり、聖天(大聖歓喜天)の根本道場である。〝本尊不動明王〟を祀る本堂と並んで唐破風のある八棟造の聖天堂拝殿がある。

 〝商売繁盛の神〟として絶大なご利益があるとされる。寺は、〝堪海律師(1629-1716)〟によって開基された。延宝6(1678)年生駒山に上り、役行者・弘法大師伝説の〝般若窟〟に修行し、弥勒浄土の内院であるとして〝都史陀山大聖無動寺(としださんだいしょうむどうじ)〟と称した。寺号を元禄5(1692)年に寶山寺と改めた。

 今、般若窟を仰ぎ見れば、院達作の弥勒菩薩像が鎮座されているのはその為である。火山崖の生駒巌山(総称朝日嶽)は不動明王の座所とされる事から堪海自ら不動明王を刻んで本尊とし、鎮守として聖天(歓喜天)を勧請した。〝聖天尊像〟は、象頭人身の夫婦二夫の抱擁姿で表す秘仏である。その供養も導師以外見ては成らぬとされ、毎早暁2時から行なわれる適温の油を満たした盤に像を安置して杓で油を注ぐ〝浴油供養〟と云う。

 歓喜天は、インドの神ガネーシャ(ガナバチ)でヒンドゥー教主神シヴァと妃との間に生まれた悪神が十一面観世音菩薩によって済度され、密教を守護する善神になったとする神である。現世的愛欲煩悩を肯定する姿で現れ、あらゆる願望を叶える絶大な威力を持つとされる。絵馬堂の名物絵馬「心に鍵」を見ると、〝地位向上・商売繁盛〟は当たり前で、煩悩・衆生の博打や酒・薬物・浮気封じ・縁切りの〝たちもの・たちなおり・男女関係の解決〟を願う内容であり、現実に関する願いを任せられる現世利益の神の様だ。商売繁盛ご利益絶大として水商売関係者朔日参りの崇敬は今も絶大である。真言は「南無大聖歓喜双身天王」〝オン キリギャクウン ソワカ〟。

【freelance鵤書林251 2020/6/26いっこう記】

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