奈良大和路地域創生の食遺産の拠点は、単なる来訪者の為の休息・食事・買い物・観光情報収集施設「S.A.・道の駅」ではなく、農産物をはじめ特産物が集積し地産商品販売が結構した地域の拠点となり、内外の人々の寄り集う場となる地域に自治体が設置すべき「地域センター道の駅」✤である事が確認できる。
また、文化拠点は地域市町村の「図書館」である事を提案出来る。図書館は教育委員会より独立した体制で文化力の地位向上と地域のニイズに答える文化伝道を目指さなければならないだろうし、道の駅は、磨きをかけた大和野菜や果樹の県産農産物の出荷販売、大和の郷土料理や加工名産品をまるごと味わえる、飲食ブースとして「食」のイベントの開催が求められる事は、個々ではあるが全国で実践されている成功例が報告されている。
今後、災害時の避難拠点や地域福祉などの生活拠点の役割も求められよう。それらが県内各地域均一に設置され、牽引役の両輪になり機能が発揮さる事が活性化の発信拠点となるであろう。昔的な地域小学校・公民館では今や地域拠点とはならない事を自覚すべきである。
道の駅設置数を数字からだと首都圏・離島(東京・神奈川・沖縄)を除くと奈良県は、下位六位と規模でも全国平均2万㎡に対して県平均1万5千㎡に位置する貧弱差を指摘する。
日本社会の捨て去ろうとしている価値観の変化の中で、これからの新しい日本文明を考えた場合、「今だけ・金だけ・自分だけ」から脱却し、近代文明の行き詰まりを越えて衣食住の再構成と共に実践的な循環器型社会に転換し、文化力の向上と〝ロハス(LOHAS:精神的価値追求)〟な日本(「わび・さび」)を構築し、高い技術の取得に進まなければならない。行政や民間を取り込んだ『まち(地域)づくり会社』的主導団体(NPO・株式会社・公益社団法人・財団法人)の投資銀行が求められる。
その智恵は「若者・馬鹿者・よそ者」ではなく「よそもの・かくしんもの・ほんもの」の智恵が必要なのである。町づくり・地域づくりにはソーシャルビジネス的視点が必要であり、ボランティア化では無しに満足の物指しに見合った代価にならなければならない。人と人・要素と要素(経済)を繋げ、問題を課題と読み替え市場の限界を越える技術革新と未来を創る新機軸(イノベーション)がなければ地域創生は無理であろう。
食では、ファンを開拓した地域の「ほんまもん」の地産地消の価値ある売れる商品で、歴史の物語性を含んだ地域食文化の新しい産物の名産品を創造した地域づくりを進める事である。リピーターを生む魅力的な食事と買い物、私へのお土産のスローな美酒美食法が世界の潮流なのである。
観光立国化に伴い外国人観光客は一千三百人を突破し、2020年には二千万人を目指すと言う(10年前の三倍・2016年に二千四百三万人に達し、2030年の目標八千二百万人と修正されている)。観光政策があれば経済効果を生んで地域創生に直結するとする信奉者がいるが、京都の十分の一に過ぎない観光県奈良に「大佛商法」のみの何の仕掛けや地域史の掘り起し“智慧”の無い処には、何も生まない。大観光地京都とて問題点や現状が詳細に報告されている✤。
今や「食べる・見る・買う・体験する(遊ぶ)」が観光の主流になり、消費を伸ばすには売れる売るものが必要なのである。コンセプトは、近江商人の“売り手よし・買い手よし・世間よし”の「三方よし」である。(以上)
✤ 交通の流れの快適な休憩処という都市工学や農業経営の制度設計から近年は、人と人・地域と地域の交流によって文化・風景・産物等を通じて地域が持つ魅力を認知してもらえる場となることを目的とされてきている。地域間の協力・連携に結びつくような地域づくりの拠点を目指して、他県では地域が一体となって道の駅に関わる事が多くなっている。地域にとってマップ拠点に記載される道の駅は重要である。
2015年2月26日国土交通省は、「重点道の駅制度」創設を発表した。模範となる「全国モデル道の駅」6箇所、将来性が期待される「重点道の駅」35箇所、「重点道の駅候補」49箇所を選定。「宇陀路大宇陀」が、重点道の駅候補として唯一エントリーされた。今後優れた道の駅を経済好循環の波及する成長戦略拠点として重点的に支援するという。
✤杉野圀明(2007)『観光京都研究叙説』1,265pp京都:図書出版文理閣 は、観光産業こそ経済を活性化させ地域づくりの要と信奉する意見に対して多岐の問題点を指摘している。観光も名所旧蹟から多様性のあるお洒落な町への傾向と主流は男性から女性へ、若者から中高年への変化が見て取れる。京の特産・名産品土産についても多くの示唆もある。
(初出典:拙稿『奈良大和の食文化を考える』2015/3/15から)
【freelance鵤書林131 いっこう記】
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