いかるが文化圏の食文化1 主食

 A.主食:アイ(褻)の食は、おかいさん(茶粥・おかい)であった。粥に「さん」を付けて恭しく呼ばれたものだ。意外と知られないが、色々なものを中に入れる「つけおかい」である。粥の種類は、麦こばし(大麦のはったい粉)・焼餅醤油かき餅キリコ蒸かし芋小豆ささげ空菽(そらまめ)・新小麦団子七草粥(春七草ナズナ(大根)代用・正月七日食す)、餅入りの小豆粥(とんどの火で小正月食す)など旬々のものを入れた。

 尚、冷御飯から作るおかいさんは、「入れおかい」と呼んで米からじっくり炊く茶粥と区別された。茶の入れない白(しら)粥(おかい)は、病人の食事だ。

 また、おみ(味噌仕立て薄味おじや)を食した。残りご飯と味噌汁で作り、米・ドロ芋(里芋)・大根・人参・素麺節・団子・南京・薩摩芋などをいれる作物の有効利用食である。忙しい昼食や昼間食に食し、胃腸にやさしいものだ。

 主に昼飯はご飯だが、麦飯(裸麦七分米三分・上流階級でも通常は麦飯だった)で、収穫期や折目時は白米(銀シャリ)となる。

 饂飩(うろん・やや太めのうどん)も大晦日以外などによく食された。

 トッキョリ(晴)の食は、巻ずし(芯の具は干瓢・高野豆腐・三つ葉・こおこ・椎茸。上方では寿司と記さない。節分の恵方巻きは高度成長期以後大阪の鮨屋が広める)や「五目すし」であるバラ鮨(具材の豌豆(えんど豆)・フキ・筍・椎茸・高野・ちりめん雑魚・こおこ・干しエビなどを混ぜ、紅生姜・錦糸卵をトッピング。関東流の見た目だけの具材の使い方はしない。「ちらし鮨などとも言わない。桃の節句には、蛤のすまし汁が付く。他は卵のすましが多い)はよく作られた。大人数の行事は後者が多い。

 季節ものとして、鯖鮨(さばずし・塩鯖をキズシにしたものを竹洲で巻く-秋)やお稲荷さん(稲荷ずし・信太、△形+裏返俵形)・赤飯(粳米+小豆で色付け・職人家では毎月朔日(一・十五日)の昼は赤飯を食す)・豆ご飯(えんどご飯-春)が食される。醤油ご飯色飯(かやくご飯ねうかご飯蕨ご飯-春[あく抜きは葡萄木灰最高]・干瓢ご飯-夏・里芋ご飯-秋・栗ご飯-9/9栗節句・松茸ご飯-秋祭・揚げご飯-寒施行)も季節毎に愉しむものだ。

 節句の時などの子供の人気食、鰹(かつお)の生節(なまぶし)で作る押し鮨がある。松竹梅などの箱型で抜いた鮨めしの上に、解して煮詰めたフレイクを乗せた鮨である。もっぱら昭和になっては、鮪(まぐろ)缶が使われる事が多いようだ。

 正月の雑煮(ぞうに、元旦・二日以後は白米)は、大和流の特徴がある。白味噌仕立ての丸餅で、角を作らず輪切りにする頭芋・ドロ芋・祝大根・人参・豆腐の具材は上方流と同じだが、白餅は取り出し「黄粉に付け」して食す独特の食べ方で、豊年祈願という。

初出典:田中一廣 2015/3/14『奈良大和の食文化を考える』抜粋

【freelance鵤書林103 いっこう記】

奈良大和路ほんまもん観光相談センター

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