紀伊半島南部(尾鷲・熊野・那智・古座川・田辺)から奈良県十津川村の熊野川流域、南北90㌔東西60㌔の範囲で群生している櫻が約100年ぶりの新種発見(認知)と茨城つくばの森林総合研究所と県林業試験場が発表、毎日新聞3/13夕刊が伝える。
大正4年のオオシマザクラ(伊豆・大島桜)の発見以来の発見で、櫻は美しい鮮やかなピンク色で〝クマノザクラ(熊野櫻)〟と命名。開花は3月上~下旬で、葉は小さく細長く固有の特徴を持ち、地元では「早咲き山櫻」と呼ばれていたと言う。そう言えば、吉野などで植林の間の自然林などでそんな一本櫻見た事あるよなぁ-。国内の野生品種は9種しか無いのだそうだ(現在、山櫻・大島櫻・江戸彼岸櫻の野生種を改良して櫻は400種に及ぶと言う)。〝美しい日本の地域資源〟が確認された訳だ。
大半の日本人が「咲いた・咲いた・桜が咲いた」と喜んでいる櫻の大部分は、人工交配で生まれた栽培品種だ。その代表が明治期以後全国を席捲しているソメイヨシノ(染井吉野・当初は吉野櫻で売り出したが、大正期種名が紛らわしいと言うので改名した経緯を持つ)。江戸の染井村(豊島区駒込)植木屋が幕末に江戸彼岸櫻の雑種と大島櫻を人工交配改良させた種子をつけない園芸品種バイオ櫻である。
明治以降全国に広がり、全国8割の桜が染井吉野である。大和でも染井吉野群植林地名所は、「奈良公園浮見堂周辺(日本さくら百選の一)・佐保川堤千本桜✤・柳生芳徳禅寺周辺・月ケ瀬湖畔の里つきがせ・生駒山麓公園・平城宮址・郡山城址(日本さくら百選の一)・竜田川公園三室山・信貴山朝護孫子寺周辺・馬見丘陵公園・葛城山麓公園・高田川堤大中公園千本桜・帯解寺・石上神宮外苑・安倍文殊院・談山神社・長谷寺・飛鳥石舞台周辺・菟田野の水分櫻・下北山スポーツ公園」が一般的スポットだ。花芽が先に出て開花し一週間で花弁を散らし葉桜となる。
〝談山神社・長谷寺〟は、枝垂れや八重桜・彼岸櫻・山櫻・薄墨櫻などの別種もあって、背景の堂塔とのスポットで赴きがある名所である。変り処では、曽爾屏風岩公苑の300本の山櫻群・200mの柱状節理断崖の屹立光景がよい。川上村あきつの小野の枝垂れ群、吉野神宮神苑の山櫻と紅枝垂れも風情だ。高見郷創造の紅枝垂れ群の〝天空の庭千本桜〟も新名所に仲間入りした。
✤幕末、旗本で奈良奉行を勤めた川路聖謨(かわじとしあきら・1801~1868)が乱伐で荒れた奉行所付近の山を古都に相応しい景観にと奈良の住人と共に千本の櫻・楓植林した古櫻木が5本(通称川路櫻・樹齢170年)残る。『植櫻楓之碑』(自書・嘉永3年建立)が五十二段の登った左に建っているが、知る人は皆無に等しいのは悲しい限り。
【freelance鵤書林137 いっこう記】
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