文化を伝えることを怠っている日本人に誤解の多い、世界遺産と文化財保護の事を記しておこう。
世界遺産とは、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ:UNESCO、本部:フランス共和国パリ中心部)の平和な世界を実現する手段の一つとしての「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に記載される物件の事。
人類の歴史が生み出した記念工作物や建造物群・遺跡・文化的景観(自然と人間の共同作品とされ、庭園や田園風景、信仰の対象となった自然環境、人間との関り:文化的なものと扱われる)などの❝文化遺産❞(832件)・地域の生成や動植物の進化を示す、地形や景観・生態系(地学的・生物学的に重要な地域、自然の美しい風景地)などの❝自然遺産❞(206件)・文化遺産と自然遺産両方の価値を兼ね備えている❝複合遺産❞(35件)の計1,073件(2017/7/現在)が登録されている。
地球上に於ける「顕著な普遍的価値」を有する条約として1972年の17回ユネスコ総会で採択され75年発効、締結国は現在193ケ国。我が国は先進国では一番遅く1992年に至って125番目に条約締結、以後毎年増加を続け、21件(文化遺産17・自然遺産4)が世界遺産リストにあり、締結国がユネスコ世界遺産センターに1年に2件まで提出する9件が暫定リスト(今後5~10年ほどの間に推薦しようとする国内リスト)入りしている。
登録・決定するのは21ケ国で構成される「世界遺産委員会」で任期は6年、2年に一度開催されるユネスコ総会において7ケ国が改選される。調査審査は、文化遺産はICOMOS (国際記念物遺跡会議)・自然遺産は IUCN(国際自然保護連合)の非政府組織(NGO)が行う事となっている。
混同してはならないのは、別に文化機関・ユネスコで2003年に採択され06年に発効された民族文化財や口承伝統の無形遺産を扱う「ユネスコ無形文化遺産保護条約」に基づいた❝UNESCO無形文化遺産❞(281件)があり、我が国は早くも2004年に締結し、「能楽、歌舞伎、人形浄瑠璃文楽、和紙、和食-日本の伝統的食文化-、山鉾・屋台・山車、題目立(奈良県)etc.」が登録されている。
また、二種の世界遺産登録とは別件に危機に瀕した古文書や書物・絵画・楽譜・映画などの歴史的記念物を扱う❝世界の記憶(記憶遺産)❞がある。これは、各国保管の歴史的貴重な史料の登録と保護・伝承する国連・ユネスコが創設「事業」として1992年から始まり、デジタルデータ化を目指すもので、各国の自発的申請によっている(299件)。我が国では「筑豊炭坑の記録画、舞鶴への生還シベリア抑留等日本人本土引き上げ記録、慶長遣欧使節資料、御堂関白記、東寺百合文書etc.」が対象入りしている。
【freelance鵤書林76 いっこう記】
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