博物館の向い、登大路に面する飛鳥園は、小川晴賜(おがわしょうよう・明治27〔1894〕~昭和35〔1960〕)が現在位置で大正11年開業。晴賜は大阪朝日新聞写真部所属の傍ら画家志望で寺院や頭塔石仏で画想を練っていた頃、會津八一と運命的出会いを果たす。意気投合すると共に熱心な勧めもあって、佛教美術写真撮影販売店・写真家の道を歩む事となる。
標本的古美術写真では無く、八一の観察眼と自身の芸術的感性を吹き込んだ腕前で、大櫓を組んでの参拝者が目にすることのないアングルの黒バック背景に浮かび上がる鮮烈な佛像、手や衣文の細部を表現した。また八一の弟子や知友の協力の下、多くの写真集、佛像・国宝解説本や自らの写真を掲載した古美術雑誌・美術史雑誌、学術本日本美術史・佛教美術叢書を編集刊行していく。
雑誌『東洋美術』を八一は我が庭と称したという。八一も晴賜の撮った写真を研究材料としたのは言うまでもない。現在、八一の揮毫した額が店内に飾られ、「仏像写真ギャラリー飛鳥園」として三男小川光三(おがわみつぞう・昭和3〔1928〕~平成28〔2016〕)氏が会長。会長が没してから休業が続くのが気がかりなところだ(島村利正(1980)『奈良飛鳥園』 東京:新潮社)。 (10時~17時頃 不定休 ☎0742-22-5883・カフェ併設)
【freelance鵤書林53 いっこう記】
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