法隆寺大工〝安堵長助〟らが施工した本瓦葺重層建物

―生駒山寶山寺創建唯一の威風本堂〝阿遮羅場〟

   生駒山寶山寺のご本尊「延宝八年本尊座共堪海作」(二尺五寸)〝木造彩色不動明王座像〟と五使者像を祀る本瓦葺重層護摩堂建物である本堂は、寺創建当初の姿を伝える唯一の建物である。法隆寺大工の安堵長助らにより施工された事はあまり知られていない。

   貞享五(1688)年に落慶し、本多家郡山藩家老梶金平一雄・民部一貞父子が施主になり、河内日下利左衛門一法、大和三碓村大庄屋大神和家が合力して延宝八(1680)年に寺の根本中堂としている(『生駒山寶山寺縁起』)。梁行五間桁行五間半の四面建物で、「明和五(1768)歳次戊子九月朔日書東寺學頭僧正賢賀」の扁額〝阿遮羅場〟を掲げる。〝あちゃら〟とは動かないもの:不動堂を意味する。不動明王は、宇宙の中心大日如来の化身であり、あらゆる悪を調伏し佛法を導く佛とされ、忿怒(ふんぬ)相は除災授福のご利益があるとされる。

   本尊脇には右に〝衿羯羅童子(こんがらどうじ)と薬厠尼(やくしに)〟左に〝制托迦童子(せいたがどうじ)と蓮華吉祥天女(れんげきっしょうてん)〟・龍王の妙力〝俱利伽羅龍王(くりからりゅうおう)〟が寄り添う。

   本堂護摩壇では護摩木が焚かれ護摩祈祷が行われる。日常的に護摩木(500円)の奉納が受付されている。その内容は商売繁昌・商談成就・報恩謝徳・障礙消滅が多い様であるが、心願成就・進学成就・就職成就・良縁成就・病気平癒・眼病平癒・血圧平癒・罪障消滅・苦悩消滅・合格祈願・受験合格祈願・子宝授与祈願・安産祈願・身体健全・心身健全・息災延命・無病息災・六根清浄・除災開運・障碍退散・厄除け・家内安全・交通安全・商業繁栄・学力向上・御禮のスタンプが用意され、氏名と数え歳を記入する事に成っている。その他に夫婦円満・呆け封止、電気関係・機械・新築・工事・海上・旅行等の安全祈願、土地円満解決・土地円満収得・金融如意・毛筆上達・技芸上達・手術成功・機能回復・心身改善・自閉症平癒・登校拒否消滅・延命等の祈願、禁煙・禁酒・禁賭事・明朗闊達・心性善良・障断等の成就、悪縁・因縁消滅などの言葉書を教えて頂いた。

   開祖堪海律師の威徳を偲び毎4月1日には大護摩會式が執り行われている。律師が最初に成就した延宝八年四月一日の前行開始日に従い、伝統300年最大重要行事と位置付けられる。早朝(9時頃)の一山僧侶のお渡りの後、国家安泰・五穀豊穣・萬民豊楽を願い〝秘法八千枚護摩供〟が厳修されると云う(12時過ぎには終了)。釈尊が彼の世とこの世を八千回行き来して人を救うことから八千枚とも云う。真言密教の修法は3月25日から七日間塩を断ち一日一食、当日は断食無言の前行の後、護摩法21回、不動真言10万遍を唱えながら八千枚の護摩木を炊き上げる行である。当日、参拝者には〝火除け盗難除け護符〟が授与される。祈祷中境内には〝盗難火災除けの御札で御座います。一年一度の御札で御座います。八千枚御祈祷済みの御札で御座います〟の掛け声が響いている。

【freelance鵤書林261 2021/3/1いっこう記】

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