古代インドで紀元前5~4世紀頃誕生した佛教は、6世紀半ば我が国に伝来する(公伝538「百済聖明王・仏像経論献」」〔『紀』552〕年)。政治の中心飛鳥・奈良の地にあって、佛像を手厚く保護した聖徳太子などの活躍により佛教文化興隆の基礎が築かれた。
佛像も多数造られ、時代の変遷を経てもその多くが奈良大和路の各寺院に残っている。佛像の種類は大分して、如来・菩薩・明王・天部・羅漢高僧の5種類である(4種類と記すのは似非事)。
如来(にょらい)-悟りを得た釈迦の姿がモデル。原則的に一枚の衣(大衣と呼ばれる僧衣・裳や裙と言う腰布)以外は装身具を付けていない、出家の身なりである。三十二の特徴的な外見を持っていると言う。よく知られているのが、長髻(ちょうけい)相で頭の頂部が盛り上がりお椀を伏せた様な形状。如来には密教において宇宙の根元とされる大日如来のほか、釈迦如来・薬師如来・阿弥陀如来などがある。新薬師寺・薬師寺・唐招提寺の薬師如来は優品。
菩薩(ぼさつ)-如来になる為に修行し、人々を救済してくれる佛。弥勒・観音・普賢・文殊・日光・月光・地蔵など。着衣や髪型などは如来と異なり宝冠・胸飾り・腕釧・天衣などの装身具を着けている。温和で慈悲深いお顔をしている。法華堂不空羂索観音菩薩・日光菩薩・月光菩薩・海龍王寺や法華寺十一面観音菩薩・法隆寺救世観音菩薩などを目にするだろう。
明王(みょうおう)-生やさしいことでは救済出来ない衆生を救う佛の使者。明王の外見は恐ろしい姿(忿怒ふんぬ)をしている。悪を懲らしめる道具を持ち、焔髪(えんぼう)と呼ばれる炎の髪型で、不動明王を除いて多面、多足・多眼などの異形が特徴。不動明王・降三世明王・軍茶利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王を五大明王と呼ぶ。大和には国宝の像は無いが、西大寺愛染堂の愛染明王は重文。
天部(てんぶ)-佛教誕生以前の土着ヒンズー教やバラモン教の神々をも吸収し、佛法の守護神としての役割を与えた。それらの神々の総称として天部と呼ぶ。佛国土の神々の姿は多種多様で、多面などの異形、鳥獣の姿を取り入れられたもの、筋骨隆々のもの、甲冑を着たものなどがある。佛の四方を守護する、持国天・増長天・廣目天・多門天の四天王像、梵天・帝釈天像、八部衆の阿修羅・十二神像・金剛力士・弁財天などは天部になる。法隆寺金堂の毘沙門天はもちろんだが、吉祥天像も天部に入り貴婦人の着用の唐服纏った姿である。
羅漢・高僧(らかん・こうそう)-尊者である羅漢や宗派の高僧・祖師像も礼拝の対象で佛像として扱われる。生前の姿を伝える高僧などは肖像彫刻と称す。興福寺北円堂の無著・世親像、東金堂・法華寺の維摩居士、宝物館の玄昉像・善珠像、唐招提寺鑑真像、法隆寺聖霊殿の聖徳太子・山背王・卒末呂王・恵慈法師像ほか、夢殿の行信僧都・道詮律師、多くの寺院の賓頭盧長者・行基菩薩・興正菩薩・忍性菩薩像など多くを拝観するであろう。
【freelance鵤書林74 いっこう記】
0コメント