最後の法隆寺大工西岡常一は、明治41年奈良県生駒郡法隆寺村西里の大工家長男として生れる。平成7年、享年87歳にて没する。
法隆寺に隣接する西里・東里集落は代々法隆寺を支えた鵤寺大工とか法隆寺大工と呼ばれた番匠の里、天王寺宮大工(金剛組)・京都宮大工(中井役所)の故郷でもある。徳川家康に重用された慶長大普請の大棟梁の中井正清大和守(1565～1619・一万石大名格)しかりで、建設ラッシュの全国の城普請大工仕事の多くにも鵤寺大工は関わり、長谷川・岡島・安田家は五畿内鑑札を預かってきた。
その伝統を受け継ぎ幕末から法隆寺に仕えた一つが西岡家で、幼少の頃から祖父(伊平常吉)に師事し宮大工の伝統技術を学ぶ。昭和9年から始まった昭和大修理の棟梁を父楢光・弟楢二郎と共に勤め、法輪寺三重塔・薬師寺金堂や西塔などの再建・修理に取り組む。古代大工道具「ヤリガンナ」を復原し、技能の保存技術伝承や後進の指導に力を尽くす。昭和49年父子で吉川英治文化賞、平成4年文化功労者表彰、翌年斑鳩町名誉町民。
斑鳩iセンター二階に常一の道具類の展示と、宮大工の世界の紹介コーナーが設けられている(8時半～18時・無休 入館無料)。また、『宮大工三代記』・『木に学べ』・『木のいのち木のこころ』の著書も残している。宮大工「鵤工舎」の小川三夫氏は愛弟子で、技術と心を受け継ぐ。
【freelance鵤書林40 いっこう記】
0コメント